称賛される三大が存在する一方で、長年にわたりSNSやネット掲示板を賑わせてきたのが日本三大がっかり名所という不名誉なカテゴリーです。一般的には「札幌市時計台(北海道)」「はりまや橋(高知)」の2つが当確とされ、第3の枠として「オランダ坂(長崎)」や「守礼門(沖縄)」が挙げられます。
しかし、取材を進めると、この「がっかり」というレッテルには時代背景による歪みと過剰な偶像化という構造的要因が潜んでいることが分かります。
典型的な事例が札幌市時計台です。時計台が建設された明治11年(1878年)当時、周囲には広大な原野とポプラ並木が広がり、木造洋風建築のシンボルとして際立っていました。ところが戦後の急速な都市開発により、周囲を地上10階建て以上の高層オフィスビルが密接して取り囲む環境へと激変しました。観光ポスターの切り取られた画角だけを見て「大自然の中に佇む赤い屋根のロッジ」を思い描いて現地を訪れた旅行者が、アスファルトのオフィス街に突如現れる佇まいを目撃し、その落差に困惑したことが発端です。
高知のはりまや橋も同様の経緯を辿っています。江戸期の歌詠みで知られる名橋ですが、昭和期の道路拡張に伴い川が埋め立てられ、長さわずか20メートルほどの人工的な欄干のみが交差点の片隅に残された時期がありました。「よさこい節」の情緒的なイメージを膨らませすぎた来訪者の困惑が口コミで拡散した結果でした。
2026年現在の現場観察では、両者ともに展示内容の刷新や歴史資料館としての機能強化、周辺親水公園の再整備などを進め、「建造物の背景にある近現代史を学ぶ施設」へとアップデートされています。予備知識を持たずに写真映えだけを期待して訪れると肩透かしを食らう一方、開拓史や土木史の文脈を理解して臨む訪問者からは、むしろ極めて知的好奇心を刺激するスポットとして再評価されています。