学校の水泳授業において、長年にわたり見過ごされてきた最大の死角がプールサイドの路面温度です。気象庁の観測データにおいて連日35℃を超える猛暑日が常態化するなか、直射日光を遮るもののないコンクリートや塩化ビニール舗装の表面は、午前10時を過ぎる頃には容易に50℃を突破します。炎天下の正午前後には58℃〜62℃という、ステーキ肉がじわじわと加熱されるほどの極度の高温に達します。
日本熱傷学会の知見によれば、皮膚は44℃で長時間の接触により低温火傷を生じ、60℃環境下ではわずか5秒前後で皮膚組織が損傷するとされています。皮膚が薄くデリケートな児童の場合、点呼や準備体操で数十秒間立ち止まるだけで、足裏の皮がめくれる、水ぶくれができるといった被害が頻発してきました。公の場で見せた保護者の悲痛な訴えや医療機関からの警告を受け、教育委員会も看過できない事態に追い込まれています。
加えて深刻なのが、プールサイド特有の熱中症リスクです。周囲の水面からの乱反射と、高温化した床面からの赤外線放射(照り返し)に挟まれることで、プールサイドに立つ児童が体感する実質的な暑さ指数(WBGT)は、百葉箱などで計測される周辺環境数値を大きく上回ります。「水の中にいるから大丈夫」という根拠のない油断が、プールサイドでの待機中や整列中の集団搬送という深刻な事故を引き起こす要因となっています。