疲弊した平日の夜に必要なのは、複雑なテクニックではなく「引き算の美学」である。最小限の食材と調味料でプロ級の味に仕立てる最大のコツは、食材の組み合わせを潔く2種類程度に絞り、うま味の相乗効果を計算し尽くすことにある。
たとえば、豚バラ肉のイノシン酸とキャベツのグルタミン酸。あるいは卵と豆腐。下ごしらえを最小限に抑えられる食材を選び、強火で一気に火入れを行うか、余熱を味方につける。そこに、しょうゆ、みりん、そしてうま味調味料を黄金比で合わせれば、長時間の仕込みを経たかのような奥行きがわずか数分で生まれる。迷いを断ち切る確固たるルーティンこそが、忙しい夜の献立難民を救う決定打となる。