大手組織設計事務所の構造・法規担当者および確認検査機関の現役建築主事らへの取材から、近年の確認申請指摘事例におけるリアルな実態が浮き彫りになりました。とりわけ槍玉に挙げられるのが、ガラスカーテンウォールや意匠的な段窓を採用したオフィス・共同住宅の案件です。
「梁成(はりせい)が600mmあるから、スラブ厚と合わせればスパンドレル90cmは余裕でクリアできていると思い込んでいた」と語るのは、都内の設計事務所に所属する一級建築士です。実際の図面では、天井裏の懐寸法や空調配管スペース、床仕上げの二重床(フリーアクセスフロア)高さを加味した結果、下階サッシ上端から上階サッシ下端までの躯体実壁寸法が850mmしか残らない計算になっていました。この計画は完了検査はおろか、確認申請の第二期審査で即座にストップがかかりました。
もう一つの深刻な指摘事例が、バルコニーや庇(ひさし)の存在を過信したケースです。「外壁からバルコニーが1m跳ね出しているため、上階への延焼は防げる」と判断し、スパンドレル寸法を省略しようとする設計意図が散見されます。しかし、床板がグレーチングやルーバー仕様であったり、開口部の直上にスラブが存在しないステップ状のファサードであった場合、火煙の巻き上げを防止する効果は認められません。告示や特定行政庁の運用基準に合致した形状・構造でなければ、緩和措置の適用は一切認められないのが行政審査の現実です。