長年、世間に対してその存在すら伏せられていた小田貴月氏。彼女が高倉健の養女として籍を入れたのは、彼が亡くなるわずか数ヶ月前のことだった。元女優であり、フリーライターとしても活動していた小田氏は、1990年代半ばに出会って以来、生活の全般を支え続けた。だが、二人の関係が公にされることは生前一切なかった。
高倉の没後、40億円とも報じられた巨額の遺産相続を巡っては、様々な推測が飛び交った。世田谷の邸宅の解体や、長年連添った愛車の処分など、電撃的な決断の数々に驚く声も上がった。しかし、小田氏によれば、それらはすべて「自分の死後に遺品や住まいが展示物のように扱われることを望まない」という本人の強い遺志に従った結果だったという。病床で密かに交わされた約束と、他人に弱みを見せない徹底した美学。遺産相続の裏側にあったのは、愛憎や欲ではなく、最期まで高倉健であり続けようとした男の執念だった。