軍艦島の歴史は、1810年頃に島で露出した石炭が発見されたことに端を発します。本格的な採掘が始まったのは明治期に入ってからで、1890年に三菱社(後の三菱鉱業、現・三菱マテリアル)が島全体と採掘権を買収したことで、海底炭鉱としての開発が一気に加速しました。
端島で採掘された石炭は、不純物が極めて少なく火力が強い「強粘結炭」と呼ばれる最高品質のものでした。官営八幡製鐵所の操業用燃料をはじめ、日本の重工業発展に不可欠な基幹エネルギーとして重宝され、島は国の屋台骨を支える要衝として位置づけられたのです。
しかし、栄華を極めた端島炭鉱に決定的な転機が訪れます。1960年代に本格化した「エネルギー革命(石炭から石油への主役交代)」です。中東からの安価な原油輸入が急増し、国の政策が石油主導へシフトしたことで、日本国内の炭鉱は次々と採算悪化に追い込まれました。
端島炭鉱も例外ではなく、出炭量の減少と合理化の末、1974年1月15日に正式な閉山宣言が下されます。そして同年4月20日、最後の離島船が出港し、84年間にわたり海底を掘り進めた炭鉱の歴史とともに、島は完全な無人島となりました。