現場の動物病院やドッグトレーナーへのヒアリング、さらに飼い主コミュニティの検証データを見ると、「愛犬が口を執拗に舐めてくる」という相談の背景には、飼い主が想定していない心理状態が頻繁に関係しています。
特に見落とされがちなのが、犬が強い緊張やプレッシャーを感じている際の服従行動です。例えば、愛犬が粗相をして飼い主が強い口調で注意した際、犬がすり寄ってきて顔や口元をペロペロと舐める場面があります。これを「反省して謝っている」「甘えて許しを請うている」と解釈する飼い主は少なくありません。しかし行動心理学的には、飼い主の怒気を察知した犬が「これ以上攻撃しないでほしい」「どうか落ち着いて」と相手の攻撃性を鎮めるために発する典型的な宥め行動(カーミングシグナル)です。
また、耳を後ろに寝かせ、しっぽを低い位置で小刻みに振りながら必死に舐めてくる場合、犬の体内ではストレスホルモンであるコルチゾールが上昇しているケースが確認されています。単に「可愛いから」と受け入れ続けるだけでは、犬が抱えている環境ストレスや不安の根本解決には至りません。