漢方医学において「肝」は、自律神経系や感情のコントロール、血流の調整を司る中枢と考えられています。ストレスや過労によって肝の機能が昂ると「肝気鬱結(かんきうっけつ)」や「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と呼ばれる状態に陥り、怒りっぽさ、焦燥感、筋肉の緊張、不眠といったトラブルを引き起こします。これらを鎮める基本処方が「抑肝散」です。
では、末尾に「加陳皮半夏」と付く処方は何が異なるのでしょうか。決定的な差は、胃腸機能への配慮と「気・水」の滞りを解消する生薬の追加にあります。
抑肝散を構成する7種類の生薬(釣藤鈎、柴胡、当帰、川芎、白朮/蒼朮、茯苓、甘草)のうち、当帰や川芎などの血を補う生薬は、体質によって「胃がもたれる」「胸やけがする」といった消化器症状を引き起こす弱点がありました。そこで、消化吸収を助けて胃の働きを活性化させる「陳皮(成熟したミカンの皮)」と、吐き気や痰・水滞を抑えて気の巡りを降ろす「半夏(カラスビシャクの塊茎)」の2種類をプラス。これにより、虚弱体質や胃腸がデリケートな人でも無理なく続けられる処方へと進化を遂げました。