「4万時間持つはずなのに、2〜3年で切れてしまった」というトラブルの裏には、照明工学上の明確な理由が存在します。実は、光を放つLEDチップ(発光素子)そのものは極めて半永久的な耐久性を持っています。それにもかかわらず短期間で点灯しなくなる最大の原因は、LED内部の電源基板に組み込まれた電子部品の故障にあります。
家庭用のコンセントから供給される電気は「交流(AC100V)」ですが、LED素子を光らせるには「直流(DC)」の安定した電流が必要です。そのため、LED電球の根元やシーリングライトの内部には、交流を直流に変換・制御する小型の電源基板が内蔵されています。この回路内で最も熱に弱いパーツが電解コンデンサです。
電解コンデンサには「アレニウスの法則」と呼ばれる熱特性があり、使用環境温度が10℃上がると寿命は半分(半減)になるというシビアな性質を持っています。LEDは発光時に紫外線をほとんど出さない代わりに、チップの背面から強力な熱を発生させます。この熱が放熱板(ヒートシンク)から適切に逃げないと、密閉された内部温度は80℃〜100℃近くまで跳ね上がり、電源基板の寿命を数千時間単位にまで急激に縮めてしまうのです。
SNSや知恵袋などで「大手メーカー製なのにすぐ切れた」「格安の海外製ノーブランド品が半年で壊れた」と報告される事例を検証すると、以下の3大要因が浮き彫りになります。
- 断熱材施工器具(Sマーク器具)への非対応品使用:天井裏の断熱材で熱がこもり、放熱が阻害されて基板が高熱破壊を起こす。
- 密閉型器具への非対応品使用:浴室や玄関ポーチなどのカバー付き器具内で熱が逃げ場を失い、コンデンサがパンクする。
- 調光器付きスイッチ回路での誤使用:調光非対応のLEDを調光スイッチで使うと、微弱な位相制御電圧によって回路に過大な負荷がかかり即座にパンクする。
「LED照明の寿命10年」という触れ込みは、あくまで放熱が適切に行われる標準的な開放環境(周囲温度25℃〜30℃程度)で稼働させた場合の理論値であり、熱設計を無視した過酷な環境下では、わずか数年で寿命を迎えてしまうのが電子工学的な真相です。