ネット上のコミュニティやドラマ愛好家の間では、本作に関する様々な噂や誤解が散見されます。当時の制作記録や関係者の手記から、真相を浮き彫りにします。
誤解1:「梅沢富美男の人気にあやかって後から企画されたドラマである」
【真相】:完全に逆です。 脚本家の山田太一とプロデューサー陣は、大衆演劇の世界をドラマに取り上げる構想を温める中で、各地の劇場を自ら足を運んで視察。そこで無名だった梅沢富美男の舞台を目撃し、その圧倒的な存在感に惚れ込んで当て書きに近い形で企画を進めました。つまり、ドラマのヒットが梅沢をスターにしたのであり、便乗企画ではありません。
誤解2:「全編が暗く救いのないアングラ劇である」
【真相】:極上のエンターテインメント喜劇です。 サラ金や夜逃げといった重いテーマを扱いながらも、山田太一のテンポの良い台詞回しと西田敏行のコミカルな演技により、笑いどころが満載です。特に旅回り中のドタバタ劇や素人役者たちの奮闘は、ウェルメイドなコメディとして現在観ても爆笑を誘います。
音楽演出の革新性:『ラプソディ・イン・ブルー』の衝撃
本作のオープニングおよび劇中音楽として印象的に鳴り響くのが、ジョージ・ガーシュウィン作曲の名曲『ラプソディ・イン・ブルー』です。大衆演劇を舞台にした泥臭い人情劇に、あえて洗練されたアメリカン・ジャズ&シンフォニーを衝突させる演出手法は、当時としては極めて前衛的でした。この音楽のミスマッチが、登場人物たちの鬱屈としたエネルギーと疾走感を見事に際立たせています。