煮魚特有の生臭さについて、「煮魚 臭み取りの理由」を正しく理解している調理者は意外に多くありません。魚の生臭さの主因は、皮の表面にある酸化した脂質や雑菌、そして鮮度低下に伴って生成されるトリメチルアミン(TMA)、さらに骨周りに残存する血合い(ヘモグロビン)の酸化です。これらは水でさっと洗う程度では絶対に落ちません。
そこで不可欠となる工程が、料亭の基本技術である「金目鯛の下処理 霜降り湯通し」です。沸騰した湯(約80〜90度)に切り身や下処理した魚をサッと2〜3秒くぐらせるか、皮の上からたっぷりと熱湯を回しかけます。表面が白く霜が降りたようになった瞬間に冷水(氷水)へ落とすのがポイントです。
この温度変化によって、以下の3つの効果が瞬時に現れます。
- 皮に残る微細なウロコが逆立ち、指の腹で撫でるだけで抵抗なく剥がれ落ちる。
- 皮表面の酸化脂質と雑菌を含んだヌメリが凝固し、水中で綺麗にこすり落とせる。
- 骨の内側にこびりついた赤黒い血合いが固まり、竹串や指先で一掃できる。
この下処理を怠ったまま煮汁へ投入すると、どれほど高級な調味料を使っても泥臭い後味が残ってしまいます。「霜降りのひと手間で料理の仕上がりの8割が決まる」と言われるのは、単なる精神論ではなく、物理的・化学的に理にかなった防臭処置だからにほかなりません。