楽曲のヒットを決定づけたのが、当時の音楽番組やMV(ミュージックビデオ)で披露された視覚的なインパクトでした。雪が吹き荒れる極限のセットの中、素肌に黒いジャケットとネクタイだけを身につけた西川貴教が、全身全霊で風に立ち向かいながら歌う姿は、日本中の視聴者に強烈な衝撃を与えました。
後にテレビ特番のインタビューや自著、トーク番組などで西川本人が明かした現場の回想録によると、この「WHITE BREATH PV 吹雪」の撮影は想像を絶する過酷さだったといいます。
撮影スタジオに設置されたのは、特大の工業用送風機と、人工雪や細かく砕いた発泡スチロール、さらにはリアルな冷気を演出するためのドライアイスでした。強風によって目を開けることすら困難な環境のなか、演出意図として「風に煽られながらもカメラを睨みつけて歌い切る」ことが求められたのです。あまりの風圧と寒さに、西川は「撮影が終わった瞬間、寒さと疲労で体の感覚がなくなり、倒れ込むほどだった」と述懐しています。
なぜあえて過酷な上半身裸に近いスタイルだったのか。当時のヴィジュアルコンセプトには、冷徹な自然の脅威と、それに対峙する人間の剥き出しのパッションを対比させる意図がありました。過剰なまでのドラマツルギーと逆境を味方につける西川の鬼気迫るパフォーマンスが合致した結果、時代を象徴する伝説の映像が完成したのです。