「塩分は敵である」という単純化された健康神話が、多くの人々を無自覚な体調不良へと追い込んでいます。食事から極限まで塩分を排除すると、血清中のナトリウム濃度が低下し、浸透圧を保つために細胞内へ水分が移動します。これによって生じる代表的な病態が低ナトリウム血症です。
医療機関の救急搬送現場や臨床データによると、軽度の低ナトリウム血症であっても、初期症状として激しい頭痛、吐き気、疲労感、集中力の低下が現れます。さらに血中濃度が急激に低下すると、脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こし、痙攣や意識混濁といった生命の危機に直結する重篤な事態に発展します。
さらに、塩分を急激に減らしすぎると、生体は血圧と血流量を維持しようとしてレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系と呼ばれるホルモン経路を過剰に活性化させます。この防御反応に伴い、交感神経の緊張、血中インスリン抵抗性の悪化、さらには中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロール値の上昇といった予期せぬ代謝異常が誘発される事実が、複数の臨床研究で報告されています。