ネット上の知恵袋やSNSには、法律知識の誤認に基づいた絶望的な書き込みが散見されます。それらを鵜呑みにして「自分はもう逃げられない」と思い込むのは非常に危険です。代表的な3つの誤解を正します。
誤解1:相手が同意しなければ裁判でも一生別れられない?
これは明らかな誤りです。日本の法律では、民法第770条第1項に定められた法定離婚事由の一覧に該当する事実があれば、配偶者の承諾が一切なくても裁判所が強制的に離婚判決を下します。
- 配偶者に不貞な行為があったとき(浮気・不倫)
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき(生活費の不払い、理由のない同居拒否)
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(性格の不一致、モラハラ、長期間の別居など)
明確な不貞やDVの証拠がない場合でも、第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が適用されます。実務上、別居期間の目安とされる3年〜5年程度の別居実績が積み上がれば、夫婦関係は修復不可能として破綻が認定されます。
誤解2:家を出たら「同居義務違反(悪意の遺棄)」で自分が有責になる?
「勝手に別居したら自分が不利になる」と相手から脅され、家を出られない人がいます。しかし、民法第752条の同居義務は絶対的なものではありません。配偶者のモラハラ、度重なる暴言、過度な束縛、あるいは深刻な不和によって心身の健康を維持できない状態であれば、別居することに「正当な理由」が認められます。着の身着のままで避難したとしても、生活費の請求を含め、不利に扱われることはありません。
誤解3:モラハラは証拠がないから裁判では通用しない?
肉体的な暴力(DV)と違って診断書が出にくいモラルハラスメントでも、近年の離婚裁判の判決事例では、継続的な暴言や無視、経済的圧迫が婚姻関係破綻の決定打として広く認定されています。ICレコーダーによる暴言の録音、LINEやメールの文面、毎日の被害状況を時系列で克明に記したメモや日記、心療内科の受診記録(適応障害やうつ状態の診断書)が立派な客観的証拠として機能します。