「ジムに1年間通い詰めてスクワットをやり込み、筋肉を2kg増やしたのに、体組成計の基礎代謝が数十キロカロリーしか増えていない」「食事制限と筋トレを両立しているのに、ある時期から全く痩せなくなった」――SNSや大手質問サイトには、筋トレに励む市民ランナーやダイエッターの悲痛な叫びが溢れています。
かつてフィットネス業界では「筋肉を1kgつければ基礎代謝が1日あたり50〜100kcal跳ね上がり、何もしなくても脂肪が燃える」といった誇大広告が横行していました。しかし、現代の運動生理学において、この説は完全に否定されています。
体内諸臓器の安静時エネルギー消費率を検証した包括的な医学データによると、各組織の1kgあたりの消費カロリーは驚くべき真実を示しています。
・骨格筋(筋肉):約13 kcal/kg/日
・脂肪組織:約4.5 kcal/kg/日
・肝臓:約200 kcal/kg/日
・脳:約240 kcal/kg/日
・心臓・腎臓:約440 kcal/kg/日
成人が過酷なトレーニングを経て純粋な骨格筋を1kg増強できたとしても、安静時消費エネルギーの純増分は1日わずか13kcal程度に過ぎません。クッキー半枚分にも満たないのが客観的な事実です。
では、なぜ「痩せやすくなる」と言われるのでしょうか。その「エネルギー必要量の真相」は、安静時の代謝増ではなく、筋肉を動かす活動時(トレーニング中や移動時)の消費エネルギーの底上げと、インスリン感受性の向上に伴う栄養分配の改善にあります。安静時消費エネルギーの数値そのものを筋肉量だけで爆発的に引き上げることは、生物の構造上不可能なのです。