ドラクエの戦闘シーンを語る上で欠かせない議論が、主観視点(ファーストパーソン)と三人称視点(サードパーソン)の演出効果の差異です。ゲーム業界の歴史において、キャラクターの姿を画面に見せる三人称視点が主流化していく中でも、ドラクエは長らく主観視点にこだわり続けました。
主観視点の最大のメリットは、「画面の前のあなた自身が剣を振るっている」という直接的なロールプレイング体験にあります。モンスターが画面いっぱいに表示され、プレイヤーに向かって牙を剥く構図は、シンプルなドット絵時代であっても強烈な緊張感を生み出しました。スーパーファミコン版『DQ6』でモンスターアニメーション変化が導入された際、スライムが跳ね、ドラゴンが息を吸い込む細やかなモーションが加わったことで、戦闘シーンの生命感は頂点に達しました。
さらに、プレイヤーの脳内にドーパミンを放出させる象徴的な演出が「会心の一撃」です。あの独特の乾いた金属的な効果音とともに画面が激しくフラッシュし、「かいしんのいちげき!」というテキストが躍る一瞬のタメは、何千回・何万回と繰り返される戦闘の中で完璧なカタルシスを生み出すよう、ミリ秒単位で計算された演出の結晶です。
PS2版『DQ8』以降で導入された三人称3Dグラフィックでは、主人公たちが実際に武器を構え、躍動感あふれるモーションで攻撃を繰り出す姿が描かれました。これにより「パーティ全員で強敵に立ち向かっている一体感」が強化され、視点選択の自由度とともに戦闘のドラマ性が一段と深まりました。