M-1の音楽を聴くだけで鳥肌が立ったり、胸が締め付けられるような感覚を覚える視聴者は少なくありません。この現象の背景には、高度に計算された音響心理学的なアプローチと、20年以上にわたる放送の歴史が築き上げた条件づけ(パブロフの条件反射)が存在します。
音楽分析の観点から見ると、『Because We Can』のテンポはBPM130前後で推移しています。これは人間の平常時心拍数(60〜80回/分)を大きく上回り、軽いランニングや興奮状態にある心拍数と完全に一致する数値です。人間はこのテンポの強烈なビートを浴びると交感神経が優位になり、自然とアドレナリンが分泌され、集中力と覚醒度が高まる生体反応を示します。
さらに、番組制作陣が徹底しているのが「緊張と緩和(カタストロフィとカタルシス)」の対比構造です。点数発表時のメロディを極限まで削ぎ落とした無機質な重低音でスタジオの空気を凍りつかせた直後、勝者が決まった瞬間に華やかなフルオーケストラのファンファーレを響かせることで、視聴者の感情を揺さぶり、劇的なエンターテインメントへと昇華させています。