フェンタニル危機なぜ中国が名指し?米中対立の火種と日本のリスク

フェンタニル危機なぜ中国が名指し?米中対立の火種と日本のリスク

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全米を揺るがす薬物危機でなぜ中国が名指しされるのか。その決定的な理由は、違法フェンタニルの製造に不可欠な原料(前駆体化学物質)の主要供給源が中国国内に集中している事実にあります。アメリカ合衆国財務省が公表した報告書によると、世界のフェンタニル取引に繋がる化学物質の50%近くが中国東部の広東省、浙江省、河北省に拠点を置く民間化学企業から出荷されている実態が浮き彫りとなっています。

かつては中国から米国へ郵便や宅配便を通じてフェンタニルの完成品が直接送られていましたが、米国の圧力により中国政府は2019年にフェンタニル関連物質を包括規制しました。しかし、事態は解決するどころか、より巧妙な分業体制へとシフトしたに過ぎません。中国の化学メーカーは規制の網をかいくぐるため、わずかに分子構造を変えた「前駆物質」を製造し、それを正規の化学原料や工業用資材と偽ってメキシコへと輸出し始めたのです。

さらに米国の怒りに油を注いだのが、政府ぐるみの関与を示唆する調査結果でした。ロイター通信の報道によると、米下院の「中国共産党に関する特別委員会」は、中国政府がフェンタニル前駆体などを製造・輸出する企業に対して付加価値税の還付などの補助金を出していたと告発しました。米国司法省中国企業起訴ニュースが世界を駆け巡った際にも、中国国内の化学企業幹部らが「米国向けに規制前駆物質を密輸する方法」を海外バイヤーに指南していた生々しい通信記録が証拠として提出されています。米国側にとってこれは単なる不法行為ではなく、「自国の若者を意図的に蝕む国家的な敵対行為」と映っているのが米中対立の核心です。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。