長野の厳しい冬、暖房もない寒冷な房内で黙々と作業をこなす日々。法務省の厳しい規律のもと、かつてIT業界のトップに君臨した起業家が、囚人番号で呼ばれる現実に身を置くこととなった。長野刑務所での生活は、外部の華やかな世界とは完全に遮断された泥臭いものだった。給食のパンの割り当てや作業効率といった細部まで観察するその視点は、生々しいノンフィクションのドラマそのものだ。
面会制限や手紙の検閲が課される極限状態。しかし、彼は絶望に打ちひしがれることはなかった。体重は劇的に削ぎ落とされ、心身ともに無駄が削ぎ落とされていく過程で、己の肉体と精神を再構築していったのである。刑務官や周囲の受刑者が見た彼の素顔は、決して悲劇のヒーローではなく、与えられた環境を淡々と最適化しようとする冷徹なまでのリアリストであった。