社員旅行をめぐって最も深刻なトラブルに発展するのが、「事実上の強制参加」と「金銭的負担」にまつわる法的解釈です。会社側が「全員参加が原則」「不参加は認めない」と通告してきた場合、労働基準法に照らし合わせてどのような問題が生じるのかを整理します。
まず押さえるべきは、会社からの指示で参加が強制される場合、その時間は労働基準法上の「労働時間」に該当するという点です。労働時間である以上、それが土日や祝日などの法定休日に実施されるのであれば、会社は労働者に対して休日労働割増賃金(35%以上の割増率)を支払わなければなりません。平日の開催であっても、所定労働時間を超える宴会や移動は時間外労働として割増賃金の対象となります。
さらに見過ごせないのが、欠席者に対する「有給休暇の強制取得」や「ペナルティ」の違法性です。平日に行われる社員旅行に参加しない社員に対し、会社が「行かないなら有給休暇を消化しろ」と命じる行為は、労働基準法第39条に定める労働者の「時季指定権」を侵害する違法行為にあたります。旅行に行かない社員には、通常通り社内での通常業務を行わせるか、会社都合の自宅待機(休業手当の支払い対象)とするのが法的に正しい取り扱いです。
また、毎月の給与から天引きされている「親睦会費」や「旅行積立金」の返金問題も明確な基準があります。社員旅行を不参加とした場合、不参加者のために支出されなかった交通費・宿泊費相当分は、労働者へ返還されなければなりません。会社が返還を拒否した場合は、民法上の不当利得返還請求の対象となり得ます。