一般的に「愛人」と「妾」は同義語として扱われやすい。しかし、歴史的史料を紐解くと、両者の間には引き裂かれた深い溝が存在する。現代の愛人が法律上の保護を受けず、社会的には隠蔽される関係であるのに対し、かつての妾は「公認された存在」であった。
最大の違いは、家秩序の中での明らかな位置づけにある。妾は正妻に次ぐ「二号さん」として親族や社会に認識され、時には屋敷内に同居することもあった。生まれた子どもの権利や家督相続に関与するケースすら存在したのだ。私的な感情の結びつきだけでなく、家制度という公的なシステムの一端を担っていた点こそが、現代の愛人と決定的に異なる。