高速神戸駅と新開地駅を結ぶ地下通路「メトロこうべ」。昭和40年代の空気をそのままパックしたかのようなこの地下街は、今やサブカルチャーの発信拠点として異様な存在感を放つ。中央に位置する名物の卓球場からは、乾いたピンポン球の音がリズミカルに響き渡る。壁面を彩る巨大な昭和風のイラスト壁画、創業数十年を誇る古書店、シャッターに描かれたレトロポップなアート。通り過ぎるだけの通路だった場所が、歩くこと自体を目的とする目的地へと変わった。
近年はインバウンドの個人旅行者もこの地下迷宮に迷い込み、スマートフォンのカメラを構える姿が日常となった。彼らが求めているのは、観光用に整備された記号的な「日本」ではない。生活の匂いが染み付いたタイルのひび割れや、手書きの定食メニューが醸し出す、リアルな日常のテクスチャーだ。