「これでいいのだ」という言葉の源流は、説明するまでもなくギャグ漫画の金字塔を打ち立てた赤塚不二夫が生涯を通じて発信し続けた人生哲学にあります。生誕90周年を迎えた赤塚不二夫の公認サイト『これでいいのだ!!』や『週刊赤塚フジオ』のアーカイブに触れると、バカボンのパパが放つこのフレーズは、単なるおどけや無責任な放縦ではなく、苛烈な人生経験をくぐり抜けた末の「絶対的な肯定」であったことが分かります。
心理療法の観点からこの言葉を解剖すると、第三世代の認知行動療法として世界的に研究が進む「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」や「ラディカル・アクセプタンス(徹底的受容)」と見事なまでに一致します。人間が精神的苦痛を感じる最大の理由は、「変えられない過去や現実を、頭の中で変えようと抗うこと」にあります。雨が降っている事実に対して「なぜ晴れないんだ」と怒り狂うような精神状態に対し、「雨が降っている。これでいいのだ」とあるがままを容認する姿勢こそが、脳の扁桃体の過剰な興奮を鎮めるのです。
また、ペンを持って紙に書き出す行為そのものにも強固なエビデンスが存在します。心理学者ジェームズ・ペネベイカー博士が提唱した「エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)」の研究によれば、ネガティブな感情をありのまま20分間記述するだけで、ストレス値が低減しワーキングメモリの機能が回復することが実証されています。日記がメンタルケアに有効な理由は、脳内で堂々巡りしていた不安を言語化して体外に排出し、客観的な情報として処理できる点にあります。
比較表が示す通り、ポジティブ日記のように「良いことを見つけなければならない」という義務感が生じず、思考記録表のように論理的な枠組みを必要としない点こそが、「これでいいのだ日記」が幅広い層に支持され継続できる強みなのです。