ネット上には「夏は黒を着れば日焼けしない」「UVカット生地なら暑さを防げる」といった俗説が氾濫していますが、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。
第一の誤解は、「黒系の羽織ものが最も涼しい」という思い込みです。確かに黒は紫外線を吸収・遮断する能力に優れていますが、同時に太陽光の可視光線や赤外線も大量に吸収します。直射日光下では生地自体の温度が数分で40度を超え、まるで熱い毛布を纏っているかのような状態に陥ります。最新の繊維工学では、特殊な酸化チタン微粒子を練り込み、「紫外線を遮断しながら赤外線を反射する淡色系(シルバーグレー、グレージュ、オフホワイト)」こそが、衣服内温度の上昇を最も抑えることが実証されています。
第二の誤解は、「天然素材の綿(コットン)100%が夏に最適」という盲信です。綿は汗をよく吸いますが、発散速度が遅いという弱点があります。大量の汗を吸った綿カーディガンを着たまま24度設定の冷房室内に飛び込むと、水分が蒸発する際に体温を過剰に奪い去り、激しい「汗冷え」を引き起こします。現代の都市環境においては、綿100%よりも、乾きやすい麻(リネン)や吸汗速乾ポリエステルとの混紡素材を選ぶのが理にかなった防衛策です。