高齢者が感情を爆発させる背景には、心理的な要因と脳科学的な要因の双方が複雑に絡み合っています。医療機関や公的研究機関の臨床報告において、特に高齢者の感情コントロール低下をもたらす決定的な要因として次の3点が指摘されています。
第1に挙げられるのが、大脳の司令塔とも呼ばれる前頭葉の萎縮による性格変化です。前頭葉は論理的思考や理性のコントロール、感情のブレーキ役を担っています。加齢や病変によってこの部位の神経細胞が減少すると、感情を抑制する機能が著しく低下し、湧き上がった怒りや不快感を理性で抑え込めなくなります。
第2に、認知機能の低下に伴う強い不安と焦燥感です。今まで当たり前にできていた家事や計算、運転がおぼつかなくなることに対して、本人は無自覚なようでいて、心の深層では強烈な違和感と恐怖を抱いています。「プライドを傷つけられた」「自分を否定された」と感じた瞬間、防衛反応として怒鳴る・攻撃的になるといった行動へ転化してしまうのです。
第3に、視力・聴力の衰えや慢性的な身体の痛み、睡眠障害といった身体的ストレスです。周囲の会話が聞き取りづらい状況が続くと、「悪口を言われているのではないか」という被害妄想を生みやすくなり、結果として突発的な怒りへ結びつきます。