『ニュースステーション』の歴史において、最も大きな転換点の一つとなったのが、1998年春に行われた女性サブキャスターの交代劇です。番組開始から12年半にわたって久米宏氏の隣で絶妙なパートナーシップを発揮した小宮悦子氏の勇退、そして元TBSアナウンサーであった渡辺真理氏へのバトンタッチには、単なる人事異動を超えた制作サイドと局の戦略が交錯していました。
当時、テレビ朝日の局アナウンサーからフリーへと転身していた小宮悦子氏は、久米氏の予測不能なフリートークを完璧に受け止め、番組の緊張感と親しみやすさを両立させる不可欠な存在でした。一部週刊誌などでは「久米氏との確執による降板か」といった憶測も飛び交いましたが、実際の降板理由はテレビ朝日の夕方報道枠強化に向けた大型戦略(『スーパーJチャンネル』のメインキャスター就任)に伴う、極めて前向きなステップアップ交代でした。長年夜の顔を務めた小宮氏の知名度と報道スキルを、苦戦していた夕方枠のテコ入れに投入するという局上層部の強い要請による決定だったことが、関係者の回想録でも裏付けられています。
後任として白羽の矢が立った渡辺真理氏は、TBSを退社した直後の抜擢でした。硬軟併せ持つ柔らかな語り口と、久米氏の過激な発言にも動じず自然体で微笑み返す独自のスタンスは、番組末期の雰囲気を穏やかに支えました。小宮氏の理知的な佇まいとは対照的な「生活者目線の共感力」が加わったことで、番組は2000年代初頭の変革期を乗り切り、2004年3月のグランドフィナーレまで盤石の体制を維持することに成功したのです。