タモリ氏の食に対するスタンスは、単なる美食主義(グルメ趣味)とは一線を画しています。バラエティ番組『タモリ倶楽部』や数々の料理コーナーで披露されてきた「タモリ流レシピ」に共通するのは、素材の性質を論理的に見極め、無駄な工程を削ぎ落とす徹底した合理主義です。そんな彼が町中華に求めたのも、高級ホテルの中国料理のような装飾性ではなく、中華鍋ひとつで仕上げられる極限の火力コントロールでした。
特にファンの間で神格化されているのが、いわゆるタモリ絶賛チャーハンに見られる米の扱い方です。タモリ氏は常々、家庭でパラパラのチャーハンを作ろうとして油を過剰に使ったり、マヨネーズなどの裏技に頼る手法に疑問を呈していました。「米一粒一粒に卵をまとわせ、強火の手際で水分を飛ばしながらも、内部のふっくら感を損なわない」という技術は、町中華のベテラン職人が振るう中華鍋の挙動そのものです。
Rettyグルメニュースの著名人特集データによれば、タモリ氏は麻布十番や麹町にある高級中華『登龍』のジャンボ餃子(1皿5個入り2,000円・1個あたり400円)を愛好する超一流の味覚を持つ一方で、1杯数百円から千円前後で提供される庶民的な炒飯やラーメンに対しても、同等以上の敬意を払ってきました。タモリ愛用町中華の理由は、まさにこの「職人の身体感覚から生み出される再現性の高い職人芸」へのリスペクトに他なりません。タモリお気に入りメニューとして語られる品々が、いずれも過剰な高級食材を使わないスタンダードな炒飯、餃子、シンプルな清湯スープのラーメンである点に、彼の揺るぎない美学が凝縮されています。