この事件が社会に与えた最大の衝撃は、日常の道具であったSNSが暗黒の捕獲網として機能していた点にある。被害者の多くは、心に深い孤独や痛みを抱え、死への思いを呟いていた。そこへ甘い言葉で接近したのが白石死刑囚だった。当時、X(旧Twitter)上に無数に存在していた「死にたい」というシグナルを、彼は極めて冷酷にスクリーニングしていたのである。
神奈川県警察による初動捜査もまた、後日様々な議論を呼ぶこととなった。最初に行方不明届が出された段階では、成人の家出や一時的な音信不通として処理されがちな側面があった。八王子市での行方不明女性を追う遺族や知人の必死の追跡がなければ、事件の発見はさらに遅れていた可能性が高い。インターネット空間の匿名の影に隠れた犯罪に対し、当時の警察機構がどのような限界と課題を抱えていたのかが露呈した瞬間だった。