ファンタジー映画の説得力は、衣装のディテールに宿る。現代の映画産業におけるコスチュームデザインは、単に俳優を着飾らせる作業にとどまらず、世界観そのものを構築する高度な建築作業に近い。アリエルの衣装制作にあたっては、水濡れによって変化する生地の陰影や、激しいアクションに耐えうる柔軟性、そしてクローズアップに耐える精緻な手仕事が求められた。
職人たちは布地の自然な風合いを生かすため、草木染めや独自のエイジング加工を施し、何層もの薄絹を重ねることで「水中の透明感」を陸上で再現した。CG技術がどれほど進歩しようとも、俳優の肌に直接触れ、感情の機微とともに揺れる布の質感だけは人間の手仕事でしか生み出せない。クラフトマンシップの粋を集めたその仕立ては、映像美術の最高峰として業界内でも極めて高い評価を獲得している。