「何歳まで生きれば繰り下げた方が得になるのか」という損益分岐点の疑問に対し、年金問題に詳しい社会保険労務士は次のように分析する。額面上の損益分岐点は、受給を開始した時点からおおむね12年(正確には約11年10ヶ月)前後で訪れる。
たとえば、70歳まで繰り下げて受給を開始した場合、65歳から受給し続けた場合の生涯総受給額を上回るのは「81歳10ヶ月」を超えたタイミングだ。同様に75歳まで繰り下げた場合は「86歳10ヶ月」が損益分岐点となる。厚生労働省が発表する日本人の平均寿命(女性約87歳、男性約81歳)を考慮すると、70歳前後への繰り下げは統計上メリットを得やすい水準といえる。
しかし、社会保険労務士が指摘するのは「額面上の数字だけにとらわれるリスク」だ。年金受給額が増加すると、それに連動して所得税や住民税、介護保険料や国民健康保険料の負担が増す。さらに、医療費の自己負担割合の判定や高額療養費の上限額にも影響を及ぼすため、額面が84%増えたからといって、手取り額がそのまま84%増えるわけではない点に注意しなければならない。