心臓の位置を身体の外側から立体的に把握するには、肋骨(ろっこつ)およびみぞおちとの位置関係を理解することが不可欠です。医療現場で用いられる心臓の位置のイラスト図解や解剖図では、心臓は強固な骨格ケージの中に厳重に保護されている様子が描かれます。
心臓の上下の広がりは、上端がおよそ第2肋骨の高さ(鎖骨のすぐ下付近)から始まり、下端は第5〜第6肋骨の高さに達します。この底面は「横隔膜」と呼ばれる筋肉の膜にぴったりと乗っかる形で固定されています。
ここで極めて重要なのが「みぞおち」との距離感です。みぞおちの直上、肋骨が左右に分かれる窪みのすぐ上には心臓の下面(下壁)が位置しています。心臓と胃は、わずか数ミリメートルの横隔膜1枚を隔てて隣接しているため、心臓下側の血管が詰まる「下壁心筋梗塞」を発症した場合、胸ではなくみぞおちの激痛や胃もたれのような不快感として脳が知覚してしまう神経の混線(関連痛)が頻繁に発生します。
なお、心臓の位置における男女差について「女性は心臓の位置が違うのか」という疑問がネット上で散見されますが、解剖学的な臓器の位置そのものに男女差はありません。ただし、以下の点で臨床的な差異が存在します。
- 心臓のサイズと重量:成人男性の心臓重量が約250〜300gであるのに対し、成人女性は約200〜250gと一回り小さい傾向にあります。
- 体表からの距離:女性は皮下脂肪や乳腺組織の厚みがあるため、体表から心尖部の拍動を触知しにくいケースがあります。
- 疾患時の自覚症状:女性の虚血性心疾患では、胸の中央を締め付けられる典型的な痛みだけでなく、息切れ、疲労感、背部痛、吐き気などの非典型的な症状が出やすいことが近年の臨床研究で指摘されています。