2007年8月にクリプトン・フューチャー・メディアから発売された初音ミクは、ニコニコ動画を中心に爆発的な創作ブームを巻き起こしました。その社会現象の渦中にあった2008年4月1日、匿名掲示板「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」のニュース速報(VIP)板において、ある壮大なイタズラ企画が立ち上がります。「VOCALOID03(初音ミク、鏡音リン・レンに続く新作)が発売されたと見せかけてネットユーザーを釣ろう」というスレッドでした。
有志の手によって、わずか数日の間に公式風のパッケージイラスト、架空のプロフィール(ドリル型のツインテール、31歳、好物はフランスパンなど)、さらには「小山乃舞世」氏の声を元にした音声素材までもが突貫で制作されました。これが重音テトの誕生秘話です。
本来であれば1日で消費されて消えるはずの「嘘」でした。しかし、飴屋/菖蒲氏が開発したフリーの音声合成ソフト「UTAU」に音声ライブラリとして組み込まれたことで、テトは実際に「歌うソフトウェア」としての命を獲得します。ネット有志によるサークル「ツインドリル」が結成され、厳格なガイドラインのもとでキャラクターの保護と無償配布が継続された結果、初音ミクのフォロワーにとどまらない独自の創作コミュニティが形成されていきました。