アクアスキュータムの原点は、仕立て職人ジョン・エマリーがロンドンの高級住宅街メイフェアに開いた紳士服店にあります。雨の多い英国において、当時の重く不快な雨具に代わる撥水技術の開発に心血を注ぎ、1853年に世界初となる防水ウール生地の特許を取得しました。この革新的な技術こそが、ブランド名「アクア(水)」と「スキュータム(盾)」の由来となっています。
その卓越した機能性は、クリミア戦争の前線で戦う将校たちの軍用コートとして採用されたことで一躍名を馳せました。その後、エドワード7世が皇太子時代にプリンス・オブ・ウェールズ・チェックのコートを注文したことを契機に、1897年に最初のロイヤルワラント(英国王室御用達)を授与されます。以降、エリザベス王太后(クイーン・マザー)をはじめとする歴代王室メンバーだけでなく、ウィンストン・チャーチル首相やマーガレット・サッチャー元首相といった歴史的指導者が重要な外交舞台で身にまとう「公の服」として確固たる地位を築きました。
ブランドを象徴するもう一つのアイコンが、1976年に発表された「クラブチェック」です。ベージュ、ネイビー、ブラウンの3色で構成されたこの格子柄は、英国の格式ある会員制クラブの伝統を感じさせる落ち着いた配色が特徴であり、裏地やライナー、マフラーに配されることで、主張しすぎない知的な気品を演出します。