塀の中の閉ざされた生活において、最大の関心事となるのが「食事」と「居住空間」です。テレビドラマ等で描かれるような粗末な残飯のようなイメージは過去のものとなり、現代の管理栄養体制は整っているものの、特有の制限と苦痛が存在します。
管理栄養士が計算する食事メニューと自弁購入の恩恵
拘置所の食事は、刑事収容施設法に基づき、成人が健康を維持するために必要なカロリー(約2,100〜2,300kcal前後)が厳格に計算されています。主食は白米ではなく、麦が約3割混ざった「米麦混交飯(麦飯)」が基本です。
おかずは肉や魚の煮物、野菜の和え物、スープや味噌汁など栄養バランスが保たれており、塩分や脂質は極めて控えめに設定されています。正月にはおせち風の特別食、祝日には小さな菓子類が配給されることもあります。しかし、保温容器で運ばれるとはいえ配食の時間差で冷めやすく、油気のない淡白な味付けが続くため、多くの収容者が強烈な物足りなさを訴えます。
この飢餓感を補う手段が「自弁購入品」です。所持金(自己資金)があれば、指定業者を通じてパン、菓子類(チョコレート、クッキー、スナック菓子)、カップ麺、果物、缶詰などを私費で購入できます。元収容者の手記では、「冷え切った麦飯に自弁のふりかけをかけたり、夜の余暇時間に食べる1枚のチョコレートが唯一の精神安定剤だった」という生々しい証言が数多く残されています。
単独室と雑居室のリアル|過酷な冬の寒さ対策
居住環境は大きく分けて「単独室(独房)」と「雑居室(共同室、通常4〜6人程度)」に分かれます。未決拘留者は共犯者との口裏合わせを防ぐため、単独室に収容される割合が圧倒的に高いのが実態です。
単独室の広さは約3畳から4畳半程度。畳敷きまたはフローリングの上に布団、小さな机、洋式便器、洗面台が設置された極小空間です。窓には曇りガラスと鉄格子がはめ込まれ、外の景色を見ることは一切叶いません。雑居室のような人間関係のいざこざや同房者からのいじめがない反面、24時間誰とも言葉を交わせない「完全な孤独」と監視カメラの圧迫感に耐え続けなければなりません。
さらに収容者を苦しめるのが「冬の寒さ」です。多くの拘置所施設はコンクリート造りで気密性が低く、暖房の稼働時間は朝晩の短時間に限られます。室温が5度近くまで下がる厳冬期には、手足の感覚が麻痺するほどの底冷えに見舞われます。
被収容者が取れる寒さ対策は限られています。官給される毛布にくるまるほか、自弁で購入できる防寒インナーや厚手のスウェット、靴下を重ね着するしかありません。使い捨てカイロの持ち込みや使用も保安上の理由で禁止されている施設が多く、寒さで眠れない夜を過ごす被収容者は少なくありません。