第2部における最大の牽引力は、主人公・デンジと三鷹アサ(および戦争の悪魔・ヨル)の二重螺旋のような関係性です。平凡な幸せや承認欲求を求めるデンジと、自己肯定感の欠如と他者への猜疑心に苛まれるアサ。この2人の接触は、単なるボーイ・ミーツ・ガールを超えた重層的な心理劇を形成しています。
臨床心理学のフレームワークである「心理的バウンダリー(自他境界線)」の観点から本作を分析すると、アサとヨルの同居状態はまさに自我の侵食と防衛規制のせめぎ合いです。他者を信じたいという無防備な感情と、傷つく前に攻撃・兵器化しようとする衝動が衝突する様は、現代人の抱える孤独感や防衛反応を生々しく照射しています。
さらに物語の深層には、ノストラダムスの予言に連なる「死の悪魔」の降臨問題や、公安組織内部の暗闘、公安対魔特異隊の再編といったマクロな伏線が張り巡らされています。「飢餓の悪魔(キガ)」が仕掛けた策略の真意は何なのか。藤本タツキ氏特有の「映画的モンタージュ技法」による予測不能なカットバックが、読者を絶えず翻弄し続けます。