リラの花が古今東西で愛される最大の要因は、その類まれなる「芳香」にあります。調香師やアロマコロジーの専門家によると、リラの花の香りは「グリーンフローラルノート」に分類されます。ジャスミンのような濃厚な甘みと、スズランのような透き通った爽やかさが絶妙に同居しており、主要な香気成分としてリナロールやフェネチルアルコールが含まれています。
満開の時期にリラの並木道へ足を踏み入れると、風が吹き抜けるたびに包み込まれるような心地よいアロマを実感できます。SNSや現地を訪れた鑑賞者の声でも「歩いているだけで深呼吸したくなる」「初夏の訪れを嗅覚で実感する」といった高評価が圧倒的多数を占めます。
一方、この花が咲く気候現象として北海道特有の言葉に「リラ冷え」があります。5月中旬から下旬、札幌などでリラの花が咲く頃に、オホーツク海高気圧から流れ込む冷たい空気によって一時的に気温が急降下する現象を指します。現地の体感温度は真冬並みに冷え込むことも珍しくなく、俳人や作家によって北国の叙情詩として描かれてきました。寒暖差があるからこそ、花弁の色が引き締まり、芳香成分が空気中に濃密に滞留するという科学的な側面も見逃せません。