噂の矛先は、一代で同社を世界的アパレルコングロマリットへと押し上げた柳井正会長兼社長個人にも向けられています。「柳井正 創価学会 会員」といった言説や、柳井正氏の宗教に関する憶測について、これまでに公表された本人の経歴や一次資料を検証してみましょう。
柳井氏は1949年、山口県宇部市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、ジャスコ(現・イオン)勤務を経て、父親である柳井等氏が経営していたメンズショップ小郡商事に入社しました。東京都渋谷区大山町に構える広大な邸宅をはじめ、日本屈指の資産家としての私生活も常に世間の耳目を集めますが、その経歴や私生活において特定の宗教団体と関係を持った事実を示す証拠は一切確認されていません。
柳井氏の思想的な基盤は、自著『一勝九敗』や『現実を視よ』、各種経済メディアのロングインタビューで極めて明確に語られています。経営における師と仰ぐのはピーター・ドラッカーや松下幸之助であり、徹底した合理主義、現場主義、自己責任原則を信条としています。著書の中で柳井氏は、運や奇跡、神秘主義的な救済に頼る思考を強く戒めており、事業の成否は「客観的な現実の直視」と「徹底した顧客視点の実行」のみによって決まるというプラグマティズムを貫いています。このような冷徹なまでのリアリスト経営者が、特定の宗教教義に傾倒し、企業経営にその影響を持ち込んでいると考えるのは、本人の発言記録や行動原理と完全に矛盾します。