若年で発症すると「自分の病気は子どもに遺伝してしまうのか」「親からの遺伝が原因なのではないか」と強い恐怖を抱く方が少なくありません。医学的には、若年性アルツハイマー病は大きく「家族性」と「孤発性」の2つに分類されます。
遺伝子の異常が直接の引き金となって発症するタイプを「家族性アルツハイマー病」と呼びます。このタイプに関与している主な原因遺伝子として、APP(アミロイド前駆体タンパク質遺伝子)、PSEN1(プレセニリン1)、PSEN2(プレセニリン2)の3つが特定されています。これらは常染色体優性遺伝(顕性遺伝)の形式をとるため、原因遺伝子を持つ親から子どもへ遺伝する確率は50%に達し、発症年齢も30代〜50代と極めて若い傾向があります。
ただし、若年性アルツハイマー病全体の中でこの明確な家族性アルツハイマー病が占める割合は約5〜10%程度に過ぎません。残りの90%以上は、特定の単一遺伝子変異ではなく、体質的要因や生活環境、後天的な生体ストレスなどが複雑に絡み合って発症する「孤発性」です。
孤発性において発症リスクを高める遺伝的要因として知られるのが「APOE(アポリポタンパクE)遺伝子のε4(イプシロン4)アレル」です。APOE4を保有している場合、アミロイドβの凝集・沈着が促進され発症リスクは数倍高まりますが、これは「持っていれば必ず発症する決定因子」ではなく、あくまで「体質的なリスク因子」の一つにとどまります。血縁者に患者がいる場合でも過度に悲観せず、客観的なリスクを正しく理解することが大切です。