つけ場に立つ行天氏の所作は、美しく無駄のない芸術のようだ。握りのプロセスで繰り出される伝統技法本手返しは、高度な熟練を要するため、現代の職人でも完璧に扱える者は一握りと言われる。掌の繊細な加減によってシャリの中に空気を含ませ、口の中で解けるような理想の食感を生み出している。
さらに、真骨頂とも言えるのが素材のポテンシャルを極限まで引き出す独自仕込みの技術だ。全国から仕入れる最上の魚介に対し、魚種や状態を見極めた熟成や締めを施す。当日の気温や湿度まで考慮したミリ単位の微調整こそが、感動を呼ぶ味の秘密である。