アパレル業界やネット通販のレビューで頻繁に交わされる言説の中には、繊維の物理特性を無視した誤解が数多く紛れ込んでいます。
最大の誤解は、「高級な天然ニットなら毛玉が一切できない」という盲信です。実際には、高級メリノウールやカシミヤ100%のセーターであっても、柔らかい極細繊維であるほど摩擦によって容易に毛羽立ち、初期段階では毛玉が生じます。決定的な違いは前述の通り、「繊維の脆さゆえに自然に脱落するかどうか」です。高級素材は自然に毛玉が落ちるサイクルを持っていますが、放置すれば確実に痩せ細っていきます。
また、「毛玉は手で千切って取れば良い」という習慣は、服の寿命を縮める最悪の行為です。手で無理に引きちぎると、毛玉に繋がっている健全な生地の繊維まで根元から長く引きずり出してしまい、次に生じる毛玉のサイズを倍増させる負の連鎖に陥ります。必ずハサミで浮いた部分だけをカットするか、刃が直接生地に触れないガード付き器具を使用しなければなりません。