「前評判でアリーナ席と聞いて大喜びしたのに、前の人の頭越しにしか見えず大失敗だった」「スクリーンすら背伸びしないと見えなかった」という嘆きは、ライブ後のSNS検証でも頻繁に観測されるトピックです。来場者がこうした罠に陥る最大の要因は、札幌ドーム特有のフラットなグラウンド構造と視覚的死角の発生メカニズムにあります。
札幌ドームのアリーナ面は天然芝ピッチを屋外から出し入れする可動式システム(ホヴァリングサッカーステージ)の土台として作られており、完全な平面です。傾斜が一切ない空間にパイプ椅子を隙間なく並べるため、ステージから一定の距離が離れた瞬間、前列観客の頭部や掲げられたペンライトが視界を遮る「視線フラット化現象」が発生します。
さらに、広大な空間がもたらす音響ディレイ(音の遅延)と視覚認知のズレも心理的疲労を加速させます。巨大ビジョンに映る演者の口の動きと、スピーカーから耳に届く歌声にコンマ数秒のタイムラグが生じることで、脳が「遠さ」を強く意識してしまうのです。この空間的リアリティを知らずに「アリーナならどこでも勝ち組」と思い込んでいると、現地で手痛いギャップを突きつけられることになります。