渋谷における音響空間の原点を辿れば、昭和初期に創業した道玄坂の「名曲喫茶ライオン」に行き着く。私語厳禁の店内で巨大な木製ホーンスピーカーと対峙するあのストイックな文化は、戦後のジャズ喫茶黄金期へと受け継がれ、日本の独自のリスニングスタイルを形成した。
しかし、現在の潮流は往年の偏屈なマニアズムとは一線を画す。会話を完全に禁じるのではなく、音と会話、そして酒やコーヒーが絶妙なバランスで共存する「ネオ・リスニングカフェ」へとアップデートされているのだ。カルチャーの文脈を受け継ぎつつも敷居を取り払い、誰もが良質な音に身を委ねられる開放感こそが、新たな世代を惹きつけてやまない。