蜷川幸雄と小栗旬の絆|灰皿伝説から彩の国芸術監督への軌跡に関する専門家の意見を丁寧に解説いたします。
蜷川演出という過酷な試練をくぐり抜ける中で、小栗さんの演技力に対する世間の評判は劇的な変貌を遂げました。特にシェイクスピア作品をはじめとする古典劇において、長大な台詞を圧倒的な身体性と説得力で観客へ届ける力は、演劇批評家からも極めて高い評価を獲得していきました。
上演年・作品名配役・公演規模蜷川演出の要求と背景演技評価と劇評の反響2003年
『間違いの喜劇』アンティフォラス兄/弟
(一人二役)オールメール(全男性キャスト)による疾走感ある喜劇。基礎技術の徹底解体。初参加ながら体当たりの熱演を見せ、蜷川に「骨のある若手」と認めさせる契機に。2007年
『カリギュラ』暴君カリギュラ
(主演・24歳)アルベール・カミュの難解な実存主義劇。狂気と純粋さを極限まで要求。読売演劇大賞優秀男優賞等を受賞。アイドル的人気を完全に払拭し名優の仲間入りを果たす。2009年〜
『ムサシ』佐々木小次郎
(藤原竜也とW主演)井上ひさし書き下ろし。ロンドン・NY海外公演を含む大型プロジェクト。海外メディアからも絶賛を浴び、藤原竜也との対峙で舞台俳優としての格を世界水準へ押し上げた。2015年
『ハムレット』ハムレット
(主演・32歳)蜷川シェイクスピアの集大成。車椅子の蜷川が病を押して鬼気迫る指導。台湾・ロンドン公演を成功裏に収める。蜷川幸雄との事実上最後のタッグ作品となった。
とりわけ2007年の『カリギュラ』は、小栗さんの役者人生における決定的な転換点となりました。不条理に苦悩し、狂気に身を委ねていく若き皇帝の姿を、小栗さんは文字通り身を削りながら演じ切りました。当時、蜷川氏は周囲に対して「旬は本当に美しく、そして凶暴になった。あれは本物の役者の顔だ」と語り、小栗さんの役者魂を惜しみなく讃えていたと伝えられています。