日本の漫画業界を牽引する講談社や集英社といった大手出版社の歴史を振り返ると、胸キュンシーンの流行は常に時代の空気感を映し出してきた。昭和の「曲がり角で食パンを咥えてぶつかる」から、平成の「顎クイ」「壁ドン」、そして令和における「股ドン」へのシフトだ。
ラブコメディや少女漫画の誌面において、キャラクター同士の「接近」はドラマのクライマックスを意味する。かつてのヒロインは受動的な存在として壁に追い詰められていたが、最近の作品ではヒロイン側が意図的に仕掛けたり、あるいはギャグ要素を交えた相互コミュニケーションの道具として使われたりする。読者が求めるのは、完璧な王子様からの威圧感ではなく、予想外の展開から生まれる「照れ」や「親密さ」なのだ。