万田坑を象徴する最大の見どころが、赤煉瓦造りの「第二竪坑巻揚機室」と、その頭上にそびえる高さ約18.4メートルの第二竪坑櫓です。地下数百メートルの切羽(きりは)へと作業員や資材を運び、掘り出した石炭を一気に引き上げていた心臓部であり、建物内部に足を踏み入れた瞬間に油と鉄の匂いが漂うかのような臨場感に包まれます。
巻揚機室内部の中央に鎮座しているのが、1909(明治42)年にイギリスのジャック・コッカリル社で製造された巨大な蒸気巻揚機です。堅牢な鋳鉄製のフレームや巨大な巻き胴、複雑な制御弁が当時の位置のまま残されており、精密機械の美しさと重厚感を間近で鑑賞できます。床面にはイギリス製の優雅な化粧タイルが敷き詰められており、単なる生産施設にとどまらない三井の威信と美意識が垣間見えます。
屋外には、ケージ(昇降カゴ)を昇降させていた鋼鉄製トラス構造の竪坑櫓や、換気用坑口、山ノ神を祀った炭鉱神社跡などが点在。坑夫たちが命を預けて地下へと降りていった昇降口の遺構を眺めると、日本の産業基盤を地下深くから支え抜いた男たちの覚悟が鮮明に伝わってきます。