現在、環境省および各自治体が警戒レベルを引き上げている重点エリアには、北東北の八幡平・十和田周辺、信州の北アルプス・御嶽山麓、群馬・栃木の県境山岳地帯、そして北海道の道央から道東にかけての広大な温泉地帯が含まれる。風情あふれる露天風呂や奥まった秘湯を安全に楽しむためには、感覚的な油断を排した具体的な防犯・防災意識が不可欠となる。
もしも入浴中や宿の敷地内で突如として熊に遭遇した場合、絶対に取ってはならない行動は「パニックになって背中を向け、絶叫しながら全速力で逃げる」ことだ。熊は逃走する動体を本能的に追い詰め、攻撃する習性を持つ。相手から視線を外さず、身体を熊に向けたまま、静かにゆっくりと後ずさりしながら障害物の陰へ身を隠す。露天風呂に入浴している最中であれば、湯船から静かに上がり、決して刺激せずに強固な建物内や脱衣所へ退避することが最優先だ。
クマスプレーを携行している場合でも、安全クリップの外し方や風向きへの配慮を頭の中でシミュレーションしていなければ、視界不良のパニック下で的確に噴射することは不可能に近い。早朝や日没前後の薄暗い時間帯における単独での周辺散策は控え、宿が発信する目撃アラートや掲示板の警告には必ず従うことが、生還率を100%に近づけるための絶対条件である。