音楽史において、何の後ろ盾もないインディーズミニアルバムがチャートを駆け上がり、社会現象にまで発展する事例は決して多くありません。その稀有な歴史的転換点となったのが、2005年8月24日の発売日を迎えたAqua Timezの1stミニアルバム『空いっぱいに浮かぶ雲』でした。
当時、バンドは都内のライブハウスを拠点に地道な活動を続けており、決して恵まれた制作環境にあったわけではありません。ボーカルの太志は、商業的なヒットの方程式や流行のスタイルに背を向け、「自分の心にある嘘のない感情だけを言葉にする」という愚直な制作姿勢を貫いていました。その純度の高い衝動が結晶化した楽曲こそが、アルバムのリードトラックとなった「等身大のラブソング」です。
メディア露出が極めて限られていた初期、火をつけたのは市井のリスナーたちでした。日本テレビ系音楽番組『音楽戦士 MUSIC FIGHTER』のオープニングテーマへの抜擢を契機に、有線放送へのリクエストが全国規模で殺到。さらに当時全盛期を迎えつつあった携帯電話の「着うた」文化と口コミが結びつき、瞬く間に若者たちの間でバイラル現象を起こします。インディーズ作品でありながら累計80万枚を超える驚異的なセールスを記録したこの快挙は、翌2006年4月の2ndミニアルバム『七色の落書き』でのメジャーデビュー、そして同年のNHK紅白歌合戦初出場へと直結する伝説のプロローグとなりました。