「強火で一気に焼き色をつける」という従来の思い込みこそが、鶏肉を硬く縮ませ、皮の水分を閉じ込めてしまう最大の原因です。料理研究家や調理科学の専門家が提唱するチキンソテーの皮パリパリのコツは、意外にも「冷たいフライパンからスタートし、弱中火でじっくり動かさずに焼く」という極めてシンプルなアプローチに集約されます。
熱せられていないフライパンに油を引かず、皮目を下にして鶏もも肉を配置します。点火後は皮の表面から脂がじんわりと溶け出し、自身の脂で皮を「揚げ焼き」にする状態が生まれます。このとき、アルミホイルをかぶせて水を入れた小鍋などの重しを乗せることで、反り返りやすい皮の全面がフライパンに密着。水分が効率よく蒸発し、メイラード反応による芳醇な香ばしさと均一なクリスピー感が生まれます。
また、肉の内部温度を急激に上げず、65℃〜70℃前後の適正温度で緩やかに熱を通すため、筋繊維が過度に収縮せず、水分をたっぷり抱え込んだジューシーな肉質に仕上がります。調理時間の8割を皮目の加熱に充て、ひっくり返した後は余熱を活かして短時間で仕上げる――これこそが、家庭で誰でも名店の味を再現できる鶏肉ジューシーな焼き方のプロの技です。