床や壁で見失いそうになりながらも、まずは数秒間だけ虫の形態を注視してください。ゴキブリに似た黒い虫の見分け方において、最大の鑑別ポイントとなるのは「背中の質感」「触角の長さ」、そして「脚のトゲの有無」の3点です。
一般的に人家へ現れる代表格であるクロゴキブリの成虫は、体長約25〜35mmで全身に油を塗ったような艶やかな黒褐色をしています。体全体が平たく、背中の翅(はね)は薄く重なり合っており、触角は体長と同等かそれ以上に長く、常に細かく前方をサーチするように動いているのが特徴です。また、後ろ脚には無数の細かいトゲ(刺毛)がびっしりと並んでいます。
一方で、見落としがちなのがクロゴキブリの幼虫の特徴です。生まれたばかりの幼虫は体長4mm前後と小さく、黒褐色の胴体の中央付近に鮮明な「白い横帯」が2本走っています。成長して中令幼虫になると全体が赤褐色〜黒褐色に変わり、成虫のような翅はありませんが、動きの敏捷性と長い触角は成虫そのものです。「小さくて白い筋がある黒い虫」を見かけた場合、それは幼虫であり、すでに屋内で繁殖している強い警戒シグナルと捉える必要があります。
さらに、目撃時に「家の中の黒い虫が飛ぶ」という挙動を見せた場合、種を絞り込む大きな手がかりになります。クロゴキブリの成虫も高い所から滑空することはありますが、自ら羽ばたいて室内を自在に飛び回ることは得意ではありません。パタパタと重たい羽音を立てて照明に向かって直線的に飛ぶ場合、屋外の光に誘われて侵入した甲虫類(カブトムシの雌、コガネムシ、カメムシの仲間など)の可能性が極めて高くなります。