靖国通りとすずらん通りが交差するこの地には、150軒を超える古書店が集積する。北向きに並ぶ店舗が多いのは、貴重な書籍が直射日光で痛むのを防ぐという、先人たちの知恵と偏愛の賜物だ。世界的に見ても、これほどの規模で古書店街が単一のエリアに集中している例は他に存在しない。
スマートフォンで検索すれば一瞬で情報が手に入る時代に、あえて神保町へ足を運ぶ人々は何を求めているのか。それは効率的な検索機能では決して引っかからない「偶然の出会い」に他ならない。棚の隅で静かに眠っていた1冊の絶版文庫本。あるいは、前所有者が残した鉛筆の書き込み。無機質なアルゴリズムの推薦機能では到達できない知の発見が、古本屋の暗がりには隠されている。